前回の記事では、バーチャルオンリー型株主総会の基本と、企業側のコストメリットについて解説しました。会場費や人件費が削減できるなど、企業にとってのメリットは決して小さくありません。
それにもかかわらず、実際に導入している企業は、2025年6月末時点でわずか74社にとどまっています。今回は、その理由を掘り下げていきます。
おさらい:企業側のメリット
前回お伝えした通り、バーチャルオンリー型は会場そのものが不要になるため、会場費・当日スタッフの人件費・印刷や郵送にかかる費用などを削減できます。あわせて、遠方の株主とも対話の機会が生まれるという利点もありました。
最大の壁は「通信障害リスク」
それでも企業が踏み切れない最大の理由が、通信障害リスクです。ある調査では、約8割の上場企業が「通信障害リスク」を、バーチャルオンリー型を開催する上での大きなハードルとして挙げています。
なぜここまで警戒されるのか。それは、通信障害が起きたタイミングによっては、株主総会の決議そのものが無効と判断されてしまう可能性があるためです。特に、採決(賛成・反対を決めるタイミング)の最中に通信障害が起き、多くの株主が議決権を行使できなかったような場合には、決議が「存在しなかった」ものとして扱われるリスクがあるとされています。
会場を用意するハイブリッド型であれば、たとえオンライン側にトラブルが起きても、会場にいる株主だけで総会を進行できます。しかしバーチャルオンリー型には、その拠り所となる会場自体が存在しません。だからこそ、通信障害のリスクがそのまま総会の有効性に直結してしまうのです。
手続きの厳格さもハードルになっている
前回紹介した通り、バーチャルオンリー型を実施するには、経済産業大臣・法務大臣の確認を受け、定款(会社のルールを定めた文書)にも定めを置く必要があります。あわせて、通信障害対策の方針を決めておくことや、オンライン操作に不安がある株主への配慮方針を用意しておくことも求められます。
これらの準備には相応の時間と労力がかかるため、「検討はしたいが、着手できていない」という企業が多いのも実情です。
本人確認・議決権行使のシステム対応
会場であれば、受付で株主本人であることを確認できますが、バーチャルオンリー型ではそれができません。なりすましを防ぎながら、オンライン上で本人確認と議決権行使を成立させる仕組みが必要になり、システム面での対応コストも導入をためらわせる要因の一つです。
まとめ
バーチャルオンリー型株主総会は、コスト削減という明確なメリットがある一方で、通信障害リスク・手続きの厳格さ・システム対応という3つの壁が、導入企業がまだ少数にとどまっている大きな理由になっています。
実はこうした課題を踏まえ、要件を見直す議論もすでに始まっています。次回は、その今後の動きについて解説します。
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