「バーチャルオンリー型株主総会」という言葉を耳にしても、実際にはどんな制度なのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。

今回は、バーチャルオンリー型株主総会について、専門用語をできるだけやさしい言葉に置き換えながら、基本と現状を解説します。

バーチャルオンリー型株主総会とは?

バーチャルオンリー型株主総会とは、リアルの会場を設けず、株主総会を完全オンラインのみで開催する形式のことです。

これまで株主総会のオンライン化というと、会場は用意しつつオンライン視聴・参加も可能にする「ハイブリッド型」が一般的でした。バーチャルオンリー型は、その会場自体をなくしてしまう、より踏み込んだ形式ということになります。

ハイブリッド型とバーチャルオンリー型の比較図

実は「原則できない」ことだった

ここが意外と知られていないポイントですが、バーチャルオンリー型株主総会は、もともと会社法上、原則として認められていませんでした。

会社法298条には、株主総会を開くときは「場所」、つまり会場を決めておかなければならないと規定されています。この規定がある以上、会場をまったく設けない株主総会は、本来は開催できないことになります。

この状況を変えたのが、2021年6月に成立・施行された産業競争力強化法(企業の競争力強化を目的とした法律)の改正です。この法律に特例規定が設けられたことで、一定の要件を満たし、経済産業大臣・法務大臣の確認を受けた上場会社に限り、例外的にバーチャルオンリー型株主総会を開けるようになりました。

つまり「原則は不可、条件付きで例外的に解禁」という構造です。誰でも自由にできるわけではなく、上場会社であること・大臣確認を受けること・定款(会社のルールを定めた文書)に定めがあることといった、いくつものハードルをクリアする必要があります。

ちなみにこの制度、2026年現在からすると、すでに5年ほど前からある仕組みです。コロナ禍をきっかけに慌てて作られたものと思われがちですが、経済産業省が検討を始めたのは2018年、コロナ禍より前からのことでした。

なぜ経済産業省は推進しているのか

経済産業省がバーチャルオンリー型を後押しする理由として、主に次の3点が挙げられています。

①株主の参加機会を増やすため
遠方に住んでいて会場に行けなかった株主も、オンラインなら参加できるようになります。

②会社と株主の対話を充実させるため
参加できる株主が増えれば、その分、会社と株主が対話する機会も増える、という考え方です。

③株主平等の原則に貢献するため
会場までの移動時間や交通費といった負担の差をなくすことが、株主同士の公平性を高めることにつながる、とされています。

企業側にもコストメリットがある

経済産業省の狙いとは別に、実施する企業側にも現実的なメリットがあります。会場を丸ごと用意しなくてよくなるため、

・会場費(設営費含む)
・当日の案内や警備にあたるスタッフの人件費
・招集通知や事業報告書の印刷・郵送費(電子化を進めた場合)

といった費用が不要になります。会場とオンラインの両方を用意する必要があるハイブリッド型と比べて、コスト削減効果が大きいのも特徴です。

それでも、導入企業はまだ少数派

ここまでメリットを紹介してきましたが、実際の導入状況を見ると、まだかなり限定的です。

2025年6月末時点で、実際にバーチャルオンリー型株主総会を開催した企業は、わずか74社にとどまっています。一方で、開催できるよう定款変更だけを済ませている企業は465社(2025年3月末時点、うちプライム市場上場会社が251社)にのぼります。

つまり「制度上は準備を整えたが、実際にはまだ踏み切っていない」企業が大半、というのが現状です。なぜここまで導入が進まないのか、その理由については次回の記事で詳しく解説します。

まとめ

バーチャルオンリー型株主総会は、会場を設けずオンラインのみで開催する形式で、本来は会社法上できないことを、産業競争力強化法の特例によって例外的に可能にした制度です。経済産業省は株主の参加機会拡大などを理由に推進しており、企業側にもコストメリットがありますが、実際の導入企業はまだ74社と少数にとどまっています。

株主総会・IR配信のオンライン化についてのご相談は、検討段階でもお気軽にお問い合わせください。

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