講演会やセミナーの登壇者が身につける「ピンマイク」。見た目もスマートで、多くの現場で使われています。ただ、実はこのピンマイク、会場に音を届けるPA(拡声システム)が稼働している現場では、ハウリングのリスクを高めやすい機材でもあります。今回は、その理由と、現場による違いについて解説します。

そもそもハウリングとは

ハウリングとは、マイクが拾った音がスピーカーから出力され、その音を再びマイクが拾ってしまうことで起きる「キーン」という不快な音のことです。これはマイクの種類を問わず、ゲイン(マイクの感度・音量)を上げすぎたときに起こる、音響全般に共通する現象です。「ピンマイクだから特別にハウリングしやすい」というわけではありません。

なぜピンマイクだとリスクが高まりやすいのか

問題は、ピンマイクの装着位置にあります。ピンマイクは襟元や胸元に装着するため、口からある程度離れた位置で音を拾うことになります。声が届きにくい分、口元で使うマイクに比べて、ゲインを高めに設定する必要が出てきます。

ゲインを上げるということは、その分だけスピーカーの音も拾いやすくなる、ということでもあります。つまり、ピンマイクは構造上ゲインを上げがちなため、結果としてハウリングが起きる閾値に近づきやすい、というのが正確な理解です。

分かれ目は「配信か収録か」ではなく「PAの有無」

ここでよく誤解されがちなのが、「配信は危険で、収録なら安心」という考え方です。実際の分かれ目は、そこではありません。

たとえば、テレビ番組のロケ(屋外でのインタビューや街中での収録など)では、ピンマイクはむしろ定番の機材です。理由は単純で、ロケの現場にはそもそも音を拡声するスピーカーが存在しないためです。マイクとスピーカーが同じ空間で鳴り合うことがないので、ハウリングという現象自体が起こりようがありません。

一方、セミナーや講演会のように、会場のお客さんに音を届けるためのPA(拡声システム)が稼働している現場では、話が変わります。配信であっても、収録であっても、あるいはオンラインでの記録を一切残さない「生」の開催であっても、マイクとスピーカーが同じ空間でリアルタイムに鳴り合っている以上、ハウリングのリスクは常に存在します。

つまり判断基準は「配信か収録か」ではなく、「その場にPAがあり、鳴っているかどうか」です。

PAがある現場での考え方

PAがある現場でどうしても口元から離れた位置でマイクを使いたい場合は、事前のリハーサルで、ハウリングが起きないギリギリのゲインを本番と同じ音量・配置で確認しておくことが基本になります。

また、ピンマイクの魅力は両手が自由に使えるハンズフリーな点にありますが、その利点を保ちながら口元に近い位置で音を拾いたい場合は、ヘッドセットタイプのマイクも選択肢になります。

まとめ

ピンマイクそのものが悪いわけではなく、「口から離れた位置で使う」という特性上、配信のようにリアルタイムで会場音響と鳴り合う環境では、ハウリングのリスクが顕在化しやすくなる、というのが実情です。収録向きの機材を無理に配信で使うのではなく、現場の形式に合わせた機材選定が、トラブルのない配信につながります。

機材構成のご相談も含めて、配信に関するお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

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